■それは「エンジニアの家」から始まった。時期は少し前後するが、小手川邸建築から何軒かののち、姉夫婦の紹介で、トョタ自動車にお勤めのエンジニア、弘津氏の住まいを設計するチャンスに恵まれた。彼は自動車生産を扱うプロフェッショナル。住まいに関しても、車体をつくる技術志向と同様のこだわりがあった。つまり、キッチンの機能、浴室の機能、洗面所の機能、ダイニングの機能、リビングの機能、和室の機能、寝室の機能といった、それぞれの空間の機能をしっかりと把握し、考えるということ。それはいったい何のために必要なのか?夫婦と子供二人の四人家族にとって、適正な大きさとはどのくらいなのか?一つ一つの間取りに関しても、パーフェクトな合理性と機能性を重視する人だった。やはり、車という非常に綴密で洗練された機能を持つものを、大量に生産する企業に勤めているだけのことはある。将来性やコストパフォーマンスについても明確な説明なくしては納得して受け入れてもらうことができない。デザインに関してもそうである。美しいデザインを尊重するだけでなく、そのデザインの持つ意味合いや合理性を常に疑問として投げつけられた。